活動状況

ささやかなアフガン難民支援(5回目)とイーグル・アフガン明徳カレッジ訪問

特定非営利活動法人 警備人材育成センター理事長 松浦晃一郎
同理事 篠塚隆


 特定非営利活動法人警備人材育成センターは、自主防犯活動をより活発にし、地域の安全、安心を支えるための地域の人材育成を目的として国家公安委員会の登録講習機関として活動しているNPO法人ですが、2013年に発足し、10年を機にささやかながらアフガン難民支援を継続的に行っていくことといたしました。既に2023年10月、昨2024年3月、同9月、そして本2025年3月に4回の生活支援金贈呈式を行っており、「アラブスタディーズ」にも寄稿させていただきましたが、この9月に5回目の贈呈式を行いましたので、その模様についてご紹介いたします。
 2021年8月のタリバーン勢力によるカブール制圧以来5年を超えた今、日本はカブールに大使館を維持し、国際社会と連携しながら、アフガニスタンの平和と安定のための努力を継続していくことを方針としていますが、現在にいたる期間中、多くのアフガニスタンの方々が祖国を離れて世界中に移って行かれ、その一部は日本に避難されることとなりました。カブール陥落以降2022年には147人、2023年には237人、2024年には102人の計386人のアフガニスタン出身の方々が難民として認定されました(注)が、日本に滞在されていた方に中には祖国に戻られた方がおられる一方、一旦帰国後再び日本に戻られた方もおられます。当初難民認定された方の大半は日本大使館の現地職員、JICA(国際協力機構)事務所職員、プロジェクト関係者として勤務された方およびそのご家族でしたが、その後元留学生等で我が国とのつながりをもたれる方も認定されるようになっています。上記の難民認定人数は日本としては画期的であり、外務省をはじめ関係者の尽力によるものですが、認定後もアフガン難民の方々の日本での生活は決して容易なものではありません。


 アフガン難民支援を行っている特定非営利活動法人イーグル・アフガン復興協会に対する今回の贈呈式は、9月9日午後に、一般社団法人外務精励会大手町倶楽部において行われました。(外務精励会は外交活動の側面的支援及び会員である外務省関係者の福祉増進を目的とする団体です。)
 冒頭松浦からの挨拶で、警備人材育成センターの活動およびこれまでの支援の実績について紹介の後、日本とアフガニスタンとの絆について説明し、警備人材育成センターとしては引き続きアフガン難民支援を継続していくが、日本における難民支援の体制は必ずしも十分とはいえない、アフガニスタン出身者の難民認定数がこれまでにない水準であるのはありがたいがその後の生活基盤こそが本人たちにとり重要であるので自治体を含め色々なところから少しでも多くの支援が行われるよう期待している旨述べました。
 続いて、来賓として参加された鈴木敏郎外務精励会理事長(元外務省中東アフリカ局長、元在イラク、在シリア、在エジプト、在デンマーク日本大使)、鈴鹿光次元在アフガニスタン日本大使、藤田小織アジア福祉教育財団難民事業本部(以下RHQ)本部長、嘉治美佐子国連UNHCR協会理事(元在クロアチア日本大使)、原昌平JICA理事(南アジア担当)、そして今回初めておいでいただいた福中儀明千葉明徳学園理事長から、それぞれのご挨拶の中で、激励の言葉に加え、アフガニスタンで8月31日におきた大地震に対するお見舞いをいただきました。
ー 鈴木理事長は、かつてアフガニスタン支援に携わった者として、前回の贈呈式の際に話を聞かせていただき、難民の方々が日本で苦労されていることに改めて思いをいたすことになった、しかし松浦理事長の指導の下で警備人材育成センターが行っている支援のような善意の取り組みもあり、難民の方々の生活の進展もあると聞いているので、是非がんばって引き続き生活の発展を期していただきたい旨述べられました。
ー 鈴鹿元大使は、現地語のダリ語(ペルシャ語に近い言葉)で数日前のアフガニスタンでの地震犠牲者に弔意を表明の後、日本に暮らすアフガンの皆様にとって、日本語を学ぶことは日本社会馴染み、安定した生活の糧を獲得する上で重要であり、日本語教育に向けたイーグル・アフガン復興協会や千葉明徳学園のご尽力を高く評価します、アフガニスタンの状況が早く好転し、日本におられるアフガニスタンの方々が普通に希望の時期に帰国し、自由にご家族や友人と会い、また日本に戻られる日が来ることを念願しますとの挨拶を行われました。
ー 藤田本部長は、今年度から主務官庁が外務省から法務省出入管理庁に変更になり初めて参加した、2022年以降難民認定者でRHQの定住支援コースを受講されたには合計197人ににぼるがその後の就労支援も行っている、アフガン難民の共通項は何よりも教育レベルが平均的に大変高いことであり、日本留学者も多いのだが帰国後にアフガニスタンの復興事業を行うことを期して留学であったため日本での教育も英語で受けているので日本語の習熟度は初歩段階のケースが多いのが現実である、このため高度人材にもかかわらず日本での就労先は単純労働を中心とする職場となり本人のモチベーション維持が難しいというアンマッチがおきていると説明されました。その上で本部長は、RHQとしてはできるだけ本人の希望とギャップを埋めるべく就労相手先を吟味する一方で、本人には将来のステップアップも自身の構想として描いてもらえるようにアドバイスしていると述べられ、いくつかの成功例(独立事業家やステップアップも含む)も紹介されましたが、その中には以前贈呈式に出席された方も含まれていました。
ー 嘉治理事は、緒方貞子難民高等弁務官の下で勤務した経験に加えてアフガニスタン復興支援会議に携わったこともあるのでアフガニスタンの状況についての報に接するたびに懸念が呼び起こされると前置きの後、アフガニスタンを含め、昨今の世界の難民・国内避難民の状況およびUNHCRの直面している困難について触れ、日本社会は人生の大きな困難を乗り越えて来られた難民の方々を理解し彼ら彼女らが社会・経済で役割を果たしていくことに関心を持つべきではないかと自分は日頃から感じている、1人でも2人でも困難を乗り越えて企業やアカデミアでがんばっておられる方々の姿をみれば日本でも理解が広がるはずである、国連UNHCR協会としても見守って可能な方法で協力していきたいと述べられました。
ー 原理事は、先般のアフガニスタンの大地震被害に対するJICAの緊急援助について説明された後、日本で生活していく上ではツールとしての日本語が非常に重要であり、特に女性の方々には日本語を身につけて日本のコミュニティとのつながりを築いていただければ互いによい刺激を与えて有意義である、警備人材育成センターがお子さん方を含めた若い世代に日本語の能力をつけていくことに貢献されていることに敬意を表したいと述べられました。
ー 福中理事長は、千葉明徳学園の紹介を行われた後、2年前の7月に江藤セデカ理事長にお会いしてアフガニスタン出身の難民(および「特定活動」滞在者)女性向けの日本語学校を立ち上げる場所を探しているということを聞いたので無料で教室をお貸しすることを即決し、学校名も決めたと述べられました。さらに理事長からは、受講生の方々はお子さん連れが多いので学園の保育士・専門家からボランティアを募って就学前のお子さんの託児を行い、また小学生のお子さんたちには算数・英語・ダリ語の授業を行うこととしたとのご説明をいただきました。

 挨拶に続き、松浦から江藤セデカ理事長に2025年4月から9月まで計60万円分の支援金の目録をお渡ししました。
 引き続き、江藤セデカ理事長から、自分たちはアフガニスタン出身の難民(および「特定活動」滞在者)女性向けの日本語講座を行うためにイーグル・アフガン明徳カレッジを運営している、警備人材育成センターや千葉明徳学園のご厚意により一部だがアフガニスタンの家族を幸せにすることができてうれしく思う、受講生やそのお子さんたちも土曜日にイーグル・アフガン明徳カレッジに行くと安心すると言って楽しみにしている、平和な家庭でお母さんたちが日本のためになる人材を育ててくれるよう期待している、カレッジでは授業だけではなく行政面も含めた生活相談も行っていると述べられてその実例を紹介されました。
 また、アフガニスタン出身者代表として出席されたPさん(女性。JICAのピース・プロジェクト参加者)からは、自分もイーグル・アフガン明徳カレッジで手伝いをしているがアフガニスタンの女性に学ぶ機会を与えていただいて感謝していると述べられました。


 11月1日、千葉明徳学園を訪れると大きな孔子像が迎えてくれました(「明徳」は四書五経の一つ「大学」から引用された言葉です)。1階ロビーで早速福中理事長からお話をうかがいましたがその横の部屋やロビーでは子供たちがボランティアの方々と元気に過ごしていました。2階に上がったところで2人のアフガン人女性が勉強しておられましたが3年生のクラスの受講生だそうでした。その後1年生の教室に案内され、そこに17人の受講生全員が集まっていただきました。松浦からの挨拶の中で「皆さんの生まれる前のことですが」と前置きして1964年の中東経済ミッションの報告書を取り出し、その時以来のアフガニスタンとの関わりを説明の上今後ともますます勉強されて日本での充実した生活を築かれるよう期待している旨激励すると、受講生の方々はうれしそうに聞いておられました。引き続き江藤セデカ理事長の司会で一人一人の受講生から発言をいただきましたが、自然な日本語の発音・イントネーションで異口同音に「勉強する機会を与えられてうれしい」「できればもっともっと勉強したい」という言葉を聞けたのはありがたいことで、松浦からも生活上困ったことがないかなど色々な質問をさせていただきました。何回も贈呈式に出席していただいたMさんも上手な日本語で教室の手伝いをされていましたし、受講生の方々の明るい表情と目の輝きが大変印象的でした。このようなすばらしい取り組みを行われているイーグル・アフガン復興協会と千葉明徳学園に改めて敬意を表したいと存じます。


 第5度目の資金贈呈式に引き続き、イーグル・アフガン明徳ガレッジを訪問して受講生の方々の上達ぶりを目の当たりにすることができたのは大変意義深いことでした。当警備人材育成センターのささやかな支援がアフガン難民女性の方々の日本語学習という形で引き続き役に立っているのはありがたいことですが、言語・文化の異なる日本での生活がまだまだ大変なことに変わりはありませんし、お子さんたちの成長に伴って新たな課題に直面されることになるのも想像に難しくありません。藤田本部長も述べられていたように難民認定において重要なのはとりわけその後のことですが、特にアフガニスタンの場合のように、古くから親日国で日本のために働かれていた方々、あるいは日本に縁のある方々が難民となられているケースでは、そうした方々を支援することがとりわけ必要なのではないでしょうか。当センターとしては、今後とも特性を活かした職探しを含め可能な限りアフガン難民の方々を支援する活動を続けていきたいと考えており、こうした支援が各方面にさらに広がっていくよう心から祈念しております。

(注)なお、難民認定された386人の方々以外に、2024年末時点で、285人のアフガニスタン出身の方々が、「特定活動」の在留資格(緊急性等を理由に「短期滞在」の在留資格で入国し、許可された在留期間(90日)を超えて引き続き日本への滞在を希望される方のうち、「留学」、「技術・人文知識・国際業務」、「家族滞在」等の活動を行われない方については、本国の情勢を踏まえ、身元保証人の方が、引き続き当該アフガニスタンの方(配偶者の方やお子さんが本邦に滞在される場合を含む。)が日本において安定した生活を送るために必要な支援を行うことや、帰国・出国できるようになった際の帰国・出国費用等を保障することを条件として、就労可能な「特定活動(1年)」の在留資格が付与されています)を有して日本国内に滞在されています。

江藤セデカ理事長への目録贈呈
贈呈式出席者一同による記念撮影(写真提供:警備新報)
イーグル・アフガン明徳カレッジ受講生の方々とのやり取り
イーグル・アフガン明徳カレッジ関係者の方々との記念撮影(写真提供:国際ジャーナル)

松浦晃一郎
第8代ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)事務局長
1937年生まれ。山口県出身。東京大学法学部を経て、外務省入省。米国ハヴァフォード大学経済学部卒。経済協力局長、北米局長、外務審議官(先進国サミットのシェルパ兼任)を経て駐仏大使、世界遺産委員会議長、アジア初のユネスコ事務局長(第8代)を務める。在任中は組織改革を断行し、米国の加盟復帰実現や、無形文化遺産保護条約の策定など多くの業績を残している。帰国後、立命館大学学術博士号を取得。現在はアフリカ協会会長、世界遺産アカデミー会長、日仏会館名誉理事長、パリ日本文化会館運営審議会共同議長、群馬草津国際音楽協会代表理事、関西大学客員教授、株式会社パソナグループ特別顧問等を兼務。『世界遺産 ユネスコ事務局長は訴える』、『私の履歴書-アジアから初のユネスコ事務局長』などの他、英語および仏語による著書多数。

篠塚隆
1956年生まれ。兵庫県出身。東京大学法学部を経て、外務省入省。フランス国立行政学院(ENA)留学。内閣官房内閣参事官、宮内庁式部副長等を経て、在アトランタ総領事(米国)、駐モロッコ大使を務める。現在はアフリカ協会特別研究員、日本・モロッコ協会副会長、ルネサンス・フランセーズ日本代表部名誉顧問等を兼務。著書(共著)『英国王室と日本人』、訳書『ジブチ大使のすばらしい日本滞在記』。